Xbox Series S と X の間のスケーラビリティについて

先日ごちゃごちゃ書いた、「Xbox Series S のスペックが、世代交代時の縦マルチと同様、次世代全体の足を引っ張るのだ、だから早晩SSもSXも横マルチから外されてますますPS5のみのタイトルが増えるだろうねゲハハハハ」というクソゲハ的な煽りに対する技術的考察について、IGNにとてもよくまとまったインタビュー&解説記事が出てたので、参考までに。

掲示板やSNSで引用/援用されたものを含む、開発者たちの反応をまとめたスレ
https://www.resetera.com/threads/devs-react-to-the-xbox-series-s-specs.284204/


XboxデベロッパーがXbox Series Sに制限されることはないと明かす――ビジュアルがスケールダウンするだけでSeries Xと同等のゲーム体験を提供可能」
https://jp.ign.com/xbox-scarlet-xbox-4/46926/news/xboxxbox-series-sseries-x

要約しつつ若干補足も入れると、

  • ビジュアルは普通にスケールする(これがまず大前提)
  • 前世代より8倍強力なCPUと40倍(raw)~80倍(圧縮時)高速なストレージI/Oという部分は S も X も同じ
  • 可変レートシェーディング、DirectXレイトレーシングXbox Velocity Architecture という DX12U 世代の機能も同じ
  • 劇的に高速化したI/Oは「長いロード時間を隠すための長い廊下や不必要なエレベーターといったものがもはや不要になることから、開発元がレベルデザインなどにアプローチする方法も変わる」という変化を生み出し、この部分は Series X とも PS5 とも同じ (※PS5の方がより高速化されているという違いはあります)
  • (筆者補足) このように、ゲームの核となるデザインやレベルデザインに関わる部分はほぼ同等性能なので、あとは想定出力ターゲットが 4K なのか 1440p なのかという部分で、これは GPU パワーの差により普通にスケールする
  • そして、想定ターゲットが低解像度ということは、Series Sではゲームのインストールサイズが小さくなるということ

Xbox Series SのゲームサイズXbox Series Xよりも小さくなる」
https://jp.ign.com/xbox-series-x/46927/news/xbox-series-sxbox-series-x

  • Series SのゲームサイズはSeries Xのものよりも約30%ほど小さくなる
  • 1440p 60 fpsのパフォーマンスのXbox Series Sについては、デベロッパーは最高レベルのミップマップにはしないでしょうから、ゲームサイズは小さくなります
  • デベロッパーが柔軟性を持って、適切なアセットをインストールできる

インストールサイズは3割ほど小さくなる、ということで内蔵のSSDの 1TB 対 512GB という差を埋めるほどではないですが、インストールサイズが小さいということは当然アセットの類が小さくなってるということで、Xのメモリ16GBに対してSのメモリが10GBで3割強小さくなっているところも、アセットサイズの縮小によりおおよそ問題ないということが分かります。
(それでも少し溢れるのであれば、SSD仮想メモリとして使うことも可能。Xbox One/PS4 世代以降の hUMA メモリの場合、仮想部分も物理メモリと同じくメモリマップドで完全透過的にアクセスることができます)

最後の部分で少し煽るとすれば、「デベロッパーが柔軟性を持って、適切なアセットをインストールできる」構造になってますし開発キットでもそれをサポートしてますので、「AAAタイトルではアセットを作り分けるとかやってないんだ」という例のご意見は、「できない、やってないのではなく、お前んとこができない/やってないだけだ」といったところでしょうか(笑)
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※もとのTwitterでの発言は既に消されているようです

また、現行世代と次世代で大きくパワーアップしたCPUについては、現行世代でも「ボトルネックになってるのはCPU」という開発者の話がいくつかあります。
「Gears 5ではどうやって4K/60fpsを実現したのか、CPU負担を減らすためにやったこと。」
https://wpteq.org/xbox/post-52832/

Xbox One Xは2017年に非常にパワフルな性能で登場し、従来の4倍の性能を備えたGPUを搭載しました。 しかしCPUは変化が比較的少なかったこともありCPU性能がボトルネックとなっているタイトルも少なからずありました。 マイクロソフトはProject Scarlettではさらなる改善と成長を予定していますが、Rayner氏はXbox One Xで4K/60fpsを実現するためにCPUの負担を如何に減らし、処理を合理化するかの取り組みについても語っています。

「シミュレーション速度は2倍以上となりました。 同じリアリティ、そしてプレイヤー数を維持できるようにCPUの最適化が非常に多く行われたんです。 多くのシステムがCPUの計算からGPUの計算へと移動させています」とRayner氏は語ります。

「SCORN開発者「最大のゲームチェンジャーはSSDではなく、Xbox Series XとPlayStation 5のCPU。」」
https://hidebusa1.com/2020/05/17/scorn%E9%96%8B%E7%99%BA%E8%80%85%E3%80%8C%E6%9C%80%E5%A4%A7%E3%81%AE%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%81%AFssd%E3%81%A7%E3%81%AF%E3%81%AA%E3%81%8F/

誰もがSSDを次の大きなものとして売り込んでいますが、確かにSSDはアセットの読み込みと転送に大いに役立ちます。しかし、現在の世代で1番の問題を引き起こしている最大の原因はCPUです。これが、現在の世代と比較した次世代の最大の違いです。実際、PlayStation 4Xbox Oneに使用されているJaguarベースのCPUと、PS5(最高3.5GHz)とXbox Series X(最高3.8GHz)のZen 2ベースのCPUへの飛躍は、非常に大きなものになるでしょう。

ということで、CPUの差とストレージI/Oの差にはボトルネックとなるような埋めがたい差があるが、GPUとアセット周りはかなりスケールさせやすい、ので Series S と X で S が足かせになるということはない、と前回、前々回に書いたこととほぼ同内容ですが、改めて。

多種多様なスペックのPCで動かす前提のPCタイトルでは、テクスチャ解像度とかジオメトリのディティールとか解像度とかプリセットから選んで、どういうPCでもそれなりのfpsが出せるよう、つまりはスケールするように作られてますよね。以前からずっと。